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お知らせ

2019/09/06

介護した長男の妻に遺産請求権がある!?

平成30分年7月の相続法改正にともなって、介護に貢献した法定相続人以外の親族に故人より遺された金銭の請求権が認められることになりました。相続に詳しい『薬袋税理士事務所』の所長・薬袋正司さんにお話を伺いました。

親族の貢献が報われる不公平是正の特別寄与

 今回の相続税法改正で、法定相続人以外の親族が、被相続人の介護や病気療養による看護などを献身的に無償でしていた場合(この人を特別寄与者といいます)、被相続人が亡くなったあと、相続人に対して「特別寄与者」の寄与に応じた額(これを特別寄与料といいます)の金銭の支払いを請求することができるようになりました。今までですと、相続人については寄与分が認められており、例えば相続人である長女が長年被相続人の介護をしていた場合には、長女は被相続人の財産の維持に貢献したということで長男や次男よりも多く相続財産を受けることができました。しかし、相続人ではない長男の妻が介護をしていた場合には、相続財産をもらうことができませんでした。これではあまりにも不公平だということで、今回の相続法改正によって、相続人以外の者であっても財産を受け取ることができるようになりました。ここでの条件は「無償で」ということですので、何らかの対価や報酬を得ていた場合は、その対象外になります。

 では「特別寄与者」が、どの範囲までの方々が対象かということですが、特別寄与分の規定では「親族」ということになっていますので、民法上の「親族」つまり六等親以内の血族、三等親以内の姻族、ここまでが親族に入ってきます。それ以外の方は民法上では範囲ではありません。ですから、それ以外の方が介護をされるというケースが、中にはあると思いますが、そういった方の場合には、対象外になってしまいます。例えば「内縁」という形になってくると、少し難しくなってきます。内縁の方は民法上親族に入っていませんので、特別寄与料の請求は難しいと思います。ですから内縁の方が介護をしていて、亡くなった後に、何らかの対価が欲しい場合は、あらかじめ遺言書を書いてもらうのがよいでしょう。遺言書があれば、親族かそうでないかは関係なく、何らかの対価を得ることが可能です。相続人の場合であれば、もちろん遺言書がなくても法で定められた基準で分配されますが、このように内縁の方が何らかの対価を欲する場合、遺言作成者は「お世話してくれた方に、財産をあげたい」という意思と条件を明示して、ちゃんと遺言書を書いていたほうが良いと思います。

 特別寄与者がいても、これまで通り遺産分割協議は相続人間でおこなうものとされており特別寄与者は遺産分割協議に参加することはできません。あくまで相続人に対して金銭の請求をすることができるというものです。また、特別寄与料の金額は特別寄与者と相続人との協議によって決定されます。いくらにしなければいけないということは決まっていないのですが、介護サービスの利用料などが目安になると思います。例えば相続人へ特別寄与料を請求する際に、介護していた期間やどのような介護をしていたのか、もしそれらの介護についてホームヘルパー等の介護サービスを受けていたとしたらどれくらいの利用料がかかるのかという計算根拠を示せるとお互いに納得しやすいのではないでしょうか。もし協議が整わないときは、一定の期間内に限り家庭裁判所に審判の申し立てを行うことができます。この場合にも家庭裁判所は介護の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めるため、介護日記をつけておくことや要介護認定書、医師の診断書、介護サービスの利用明細などの資料をとっておくことが大切です。

 次に、特別寄与料を受け取った場合の税金の取り扱いはどのようになるのでしょうか?先ほどお話した通り民法上は相続人に対して金銭の請求ができるものですが、その実態は相続財産から支払われるものと考えられるため、相続税法上は被相続人からの遺贈により取得したものとみなして相続税が課されることとされています。例えば1億円の相続財産を子A、Bがそれぞれ5,000万円ずつ相続し、特別寄与者CがA、Bから特別寄与料として100万円ずつ受け取った場合には、Cは200万円の遺贈を受けたものとみなして相続税が課されることになります。

 7月1日から施行になったこの制度は相続人以外の親族の貢献について、これまで全く認められてこなかったものを認めてあげるという大きな変化ではありますが、特別寄与料の請求には相続人との協議や家庭裁判所への申し立て、相続税の申告の必要性など介護によって身体的にも精神的にも疲弊している親族にとってはさらなる負担になりかねません。相続人でなくても財産を受け取る権利があるということを念頭に、故人の意思で生前贈与や遺言書によって感謝の思いをのこしておくといいですね。