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らせNEWS&TOPICS

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お知らせ

2020/03/30

 

海外不動産投資に係る新税制を理解しましょう

◇海外不動産を利用した節税の封じ込め◇

今回の税制改正で投資家の注目を集めたのが「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」。「国外不動産所得の損失がある場合、減価償却費に相当する金額はなかったものとみなす」というのが特例の骨子となっております。この特例を理解するためには不動産の減価償却の仕組みを頭に入れておく必要があります。減価償却とは、購入した不動産の建物部分を資産し、経年劣化によって価値が減った分を特定の計算式で算出して、毎年の経費として計上していくというものです。減価償却費を計算する際の基準となる耐用年数は日本の不動産が基準のため、石造りで地震のない国の不動産は古いものが多く、建て替えを前提とした日本の常識を当てはめるとほぼ無価値という評価になります。実際の建物の利用可能年数は異なることを利用したのが海外不動産投資による節税です。海外不動産は購入金額に占める土地と建物の比率で建物部分の割合が大きく、帳簿上の経費となる減価償却費の金額も大きくなります。加えて海外の不動産でも税務上は日本の耐用年数ルールが適用されますので、家賃収入をはるかに超える金額の赤字を計上できるのです。海外に事業用物件を持っている人は、確定申告で不動産所得と給与所得などの他の所得との損益通算を使うことができますので、不動産所得で大きな赤字を計上することで節税できたのです。減価償却が認められなけば、節税はできなくなるという訳です。2022年の3月に申告期限がやってくる2021年分の申告から適用されます。

◇考え得る対応策◇

この税制改正で、海外不動産投資をしている投資家も、計画中の投資家も対策を講じなければならなくなりました。いくつか考えられますが、一長一短があり、慎重な検討が必要です。

一つ目は、2020年中に譲渡するという選択肢です。この場合は、賃料収入、管理費、値上がり額、節税額、譲渡所得税、為替レートなどから判断して、最低いくらで売却しなければならないかの損益分岐点を計算した上で、譲渡価額を設定し、売却することになります。

二つ目は法人名義に変更して持ち続けるという選択肢です。今回の税制改正は所得税の損益通算に関わる改正であり、法人所有の国外不動産には関係ありません。個人から法人への譲渡となるため譲渡益課税の問題が生じますが、法人であれば今までどおり中古耐用年数による減価償却が可能なので、法人税の節税に切り替えて持ち続けることができるのです。法人の形態は既存の事業法人、日本で設立する資産管理法人、国外の現地法人などが考えられます。

三つ目は、改正が追加の海外不動産を所有している場合はその所得を控除した上で算出された赤字が対象と規定し、ほかの国外不動産から生じた所得との内部通算はできる点に着目し、追加で条件のいい不動産を購入する選択肢です。ほかにもあると思いますが、いずれにしろ利害得失を多角的に検討し、最適解を見出していくことが大切です。

不動産投資は不動産の購入価格時からの時の経過によって価値が下がらない不動産を運用することがなにより重要と考えます。一般的に日本の不動産は時の経過とともにどんどん値下がりする傾向があるのに対し、国外不動産は値下がりしづらいという国も多いです。